商品説明
道場なくして柔術を修める――神道六合流「独習法」の全貌
百年前の「柔術通信教育」――独習器まで考案した驚異の完全教程!
神道六合流 柔術教授書【独習之巻・基本之巻 合冊】 付録・安全護身術秘要
帝国尚武会=編 A5判 並製
5,280円(本体4,800円+税10%)
明治末から大正期に一大勢力を築いた帝国尚武会の神道六合流柔術。
本書は、全六期からなる『神道六合流柔術教授書』のうち、第一期「独習之巻」と第五・第六期「基本之巻」を合冊復刻したものである。「独習之巻」は大正8年12月、「基本之巻」は大正9年6月に刊行された。さらに巻末には、原本では折本として付された『安全護身術秘要』を収録する。
本書の最大の特色は、何といってもその名の通り、道場に通わずとも柔術を修得するための方法を、本気で体系化していることにある。
今日なら動画教材やオンライン講習がある。しかし大正時代である。帝国尚武会は、文章、写真・図解、技の分類、練習順序、さらには一人稽古用の器具まで駆使して、柔術という本来は相手を必要とする武術を「独習可能な技術」として教授しようとした。
単なる古流柔術の技法集ではない。
近代日本における「武術通信教育」の驚くべき実践記録でもある。
■まず「柔術とは何か」から説き起こす
「独習之巻」はいきなり技の写真から始まらない。
「柔術本体の意義」「柔術修業の順路」を掲げ、まず柔術という技術そのものをどう理解すべきか、いかなる順序で修業すべきかを論じる。
柔術の「本体」を、一定不変の型としてではなく、状況に応じて変化するものとして捉えようとする議論も興味深い。つまり、単に型を暗記するのではなく、技を生み出す原理そのものを理解せよというのである。
そこから、
技 → 術 → 略
という修業の段階へ進み、習得した技を実際の状況に応じて変化・応用することを求めていく。
■投技を「系統」として理解する
本書の特徴の一つが、膨大な技をバラバラに覚えるのではなく、基本技から派生する「系統」として整理していることである。
たとえば「出足掃」から転化する技、「腰落」から転化する技などを系統立て、技と技の間にある変化の原理を明らかにする。
実際、本文には、
出足掃、支足、膝車、内股、大内股、小内刈、外股、腰車、釣腰、跳腰、浮腰、大腰、山嵐、巴投、隅返、俵返、帯返、胴返……
といった多数の技が登場し、それぞれを孤立した「技名」としてではなく、互いに変化しうる体系として整理している。
これは古流柔術の技法研究という点でもきわめて興味深い。
■「独習」の方法をここまで考え抜いた柔術書は珍しい
そして本書の白眉が、文字通り独習法である。
道場で相手を得て稽古することだけを前提とせず、
道場独習法
単独独習法
相互独習法
用器独習法
などを設け、いかにすれば一人でも柔術の身体操作を身につけられるかを論じる。
さらに、
「三拍子の一致」
「心・気・力の一致」
といった身体操作と精神作用の統一を重視し、単なる筋力運動とは異なる柔術独特の身体形成を説く。
独習は「型を一人で真似する」だけではない。
立技、寝技、締法、拳法などについて、敵がそこにいるものと想定して反復練習する具体的方法を示し、一回の練習時間、反復回数にまで踏み込む。たとえば独習器を用いた稽古については、一回十分ないし十五分、一回の中で少なくとも五十回の業を施すことなど、かなり具体的な訓練法を指定している。
その目的も明確で、
心気力の一致を養う
敵の機先を制する
応用変化の妙術を自得する
臨機応変の業に熟達する
ことなどが掲げられている。
■なんと「柔術独習器」の作り方まで載っている
ここは商品ページでぜひ大きく出したいところです。
帝国尚武会は、相手のいない独習者のために人間の身体を模した柔術練習器まで考案している。
しかも単なる紹介ではない。
野口式独習器をもとにした簡易器について、頭、頸、肩、腰、腹など人体に近い形状を持たせ、稽古しやすくする構造を説明し、「何人にも作り得る」よう製作法まで図解している。
いまでいうグラップリング・ダミーの祖先のようなものである。
「一人では柔術の練習ができない」という最大の問題を、百年以上前にかなり真剣に解決しようとしていたのである。
これは武術史・体育史の資料として見ても面白い。
■七流派420本から再編した「制定基本」
後半の「基本之巻」は、さらに性格が異なる。
夢想流、無念流、起倒流、揚心流、真蔭流、真之神道流、気楽流などに伝わる型約420本を整理研究し、そこから神道六合流としての**「制定基本」36本**を編成したもの。
現行の商品案内にもあるように、手解から中段立合、中段居捕、上段、裸体捕にいたるまでを体系的に収録する。
しかし、ここでも単なる「36本の型写真集」には終わっていない。
「型の本義」そのものを論じ、
制定基本
受身の戒
気合の戒
服装及礼式
などを説き、さらに制定基本を体育法・修心法という観点から論じる章まで設けている。
特に「制定基本」は、心・気・力の一致を重視し、単に相手を倒す技術ではなく、身体と精神を一体化させる修練として位置づけられている。
型を修することによって初学者は乱捕の上達を早め、すでに乱捕を積んだ者には、実地における技の精妙を得させる——というのが本書の立場である。
■古流から近代武道へ――その転換点を記録した一冊
本書を通読すると、神道六合流が単に「古い柔術流派」の一つではなかったことがわかる。
古流各派の技を収集・分類し、共通原理を抽出し、基本型を制定する。
さらに、全国の門人が同じ教程によって学べるよう、修業順序を標準化する。
そして、師範が常時そばにいなくても学習できるよう、「独習」という方法まで考案する。
そこには、秘伝・口伝を中心とした古流武術を、近代的な教育システムへ組み替えようとする発想がある。
その意味で本書は、技法研究者だけでなく、柔道・柔術史、武道教育史、身体文化史の資料としても非常に面白い。
■付録『安全護身術秘要』も収録
巻末には、原本では折本として刊行された**『安全護身術秘要』**を完全収録。
ここでは柔術を実際の護身へ転用するための心得・技法が簡潔にまとめられ、さらに「武術必勝十戒」まで掲げられる。そこには「敵の風装を見て其人を知るべし」「動作移るを見て敵の癖を知るべし」「敵と立合ふ時其位を知るべし」といった、実戦に臨む際の観察・判断の心得が列挙されている。
【本書のおもな内容】
〈独習之巻〉
柔術本体の意義/柔術修業の順路/技・術・略/柔術各技の修行順路/投技の分類及名称/投技の基本及系統/基本技の練習法及変化法/出足掃系統技/腰落系統技/巴投系統技/背負投系統技/道場独習法/単独独習法/相互独習法/用器独習法/独習器械構造法/独習器械操作法/三拍子の一致と独習法/心気力の一致と独習法/柔術独習法図解 ほか
〈基本之巻〉
型の本義/制定基本/受身の戒/気合の戒/服装及礼式/手解/中段立合/中段居捕/上段/裸体捕/体育法より見たる制定基本/修心法より見たる制定基本 ほか
〈付録〉
安全護身術秘要/武術必勝十戒 ほか
『奥秘 柔術教授書』とあわせて読むことで神道六合流の全教程が見えてくる
『神道六合流柔術教授書』は全六期から成り、本書にはそのうち**第一期「独習之巻」と第五・第六期「基本之巻」**を収録しています。
「独習之巻」では、柔術とは何か、いかなる順序で修業するのかを説き、投技の分類・系統、単独独習法、相互独習法、用器独習法、独習器械の構造・操作法などを詳しく解説。さらに「基本之巻」では、型の本義、制定基本、受身、気合、礼式など、神道六合流柔術を修めるための土台を体系的に示しています。
これに対し、第二〜第四期にあたる**「龍之巻」「虎之巻」は、弊社刊『奥秘 柔術教授書 龍之巻・虎之巻・特科虎之巻 合本』**に収録されています。
『奥秘 柔術教授書』では、投技・抑技・締技・当技・活法・整法など、神道六合流の具体的な技法を豊富な写真によって詳説。さらに上級篇「特科虎之巻」では、「龍之巻」「虎之巻」で修得した技を、いかに実地に活用し、変化応用し、奥儀へ進めていくかが説かれています。
つまり、
本書『神道六合流 柔術教授書』
=「どう学ぶか。どう身体を作り、どう基本を身につけるか」
『奥秘 柔術教授書』
=「何を使うか。技をどう掛け、どう変化させ、どう奥儀へ進むか」
という関係になります。
本書で修業法・独習法・基本型を学び、『奥秘 柔術教授書』で投・抑・締・当・活法・整法から変化応用・奥儀秘伝へ進む。
この二冊をあわせて読むことで、帝国尚武会が体系化した神道六合流柔術の巨大な教授体系がほぼ一望できます。